これにて一件落着……か?
最終話、お待たせしました。
チープな手段をとりつつ、ようやっと話を終わらせることができました。
途中から堕ち云々がわりとどうでもよくなって、俺のヒーロー好きな部分のみが抽出されちゃったような気がします。
今回の主役は間違いなくフィリスとお嬢ですけどね。
まあ、反省はするが後悔はしないぜ!
あまりにも説明不足な点は、後日あとがき的な補足を追加したいと思います。
なお、今回の話を作るにあたり、様々な方にご協力頂きました。
特にプロット作成に協力してくださったEnne様と赤い陵辱者には改めて感謝申し上げます。
当初の予定が大幅に狂ったことも重ねてお詫び申し上げますごめんねテヘッ☆ミ
というわけで、最終章!
画像がいつもの倍ぐらいあるんで、超重いです。ご注意を。
「ふふ…はははは……あぁっはははははは!!
目ぇ覚めたか、菫ぇ!!」
「ん…?ははっ、なんだ、まだ起きちゃいねえのか。
いいさ、お前が目ぇ覚ます前に、邪魔な連中を潰しとくからよ!!」
「う、う……っ!あれが菫さん!?」
「こんなノ、初めて見るヨ!」
「あれは繭……魔因子のプールだったのね……!」
その時、触手繭がぶるっと蠕動したように見えた――次の瞬間。
「「「!!!」」」
「うああああっ!!」
「ワーーーッ!!」
「きゃあぁっ!!」
触手が群れを成し、三本の触腕を形成したかと思うと、瞬く間にライブエンジェルの3人を捕えた。
「くっ、このぉっ、放せっ!!」
暴れようにも、身体をがんじがらめに拘束された状態では、ろくに力を込める事もできない。
「こノッ、こノッ!だめダ、ちぎれないヨ!」
「あ、あぅぅ……気持ち悪いです……!」
「ははっ、あははははは!!
分かってくれたんだな、菫!
アタシとお前の世界には、他に何も要らないってよぉ!!」
「フィリス!キミ、スミレがこんなグロい事になっちゃってもへーきなノ!?」
「グロいだぁ?
てめえの目は節穴かよ!そら、見てみろ…!」
「見てミロ……?……アッ!!」
菫の身体を包んでいた赤いゲル状の何か。
それは菫の体表と一体化し、ギラギラとした光を放つ異形の肌へと形を変えていた。
「もうすぐだ、もうすぐ菫が目を覚ます。
そうすりゃ後は簡単だ……アタシと菫で、新しい世界を作るんだ……はは、あはは、あははははは!!」
「フィ、フィリス……!」
狂ったように笑うフィリス。
その哄笑を遮り、少女の声が響いた。
「お、お嬢!?」
「……あん?」
「アッ!ニノっち!」
「ええっ!?に、ニノンさん!?……ゆなさんまで!」
「な、なあ、フィリス……だよな?
な、何やってんだよ……その、キモいの、何なんだよ……!?」
「……!」
「キモいのとは何だ、てめぇ……菫に決まってるだろうが。
いつも金魚のフンみてえに菫のケツにくっついてやがるくせに、そんな事も分からねえのかよ!」
「それが……本当にお嬢だって……言うのか、よ……!?」
「そ、そんな……あれが、お姉さま……!?」
「はっ……でもまあ、丁度良いや。
菫はもう、てめえらとつるむ事も無くなったからよ。
この場でしっかりお別れさせてやるよ」
「!いけない、二人とも!!早く逃げて!!」
「ゆなっチ、にのっチ!!今のフィリスは危ない子なんダ!」
「逃げて下さい、早く!!」
「わめくなよ、雑魚共……」
「ひっ……」
「考えてみりゃ、てめえらがキッカケくれたんだよなぁ?
そういう意味じゃあ感謝するぜ。ありがとよ、お二人さん。
……ま、アタシらの世界にはてめえらも要らないけどな」
「ニノンさん!逃げてえっ!!」
勇の絶叫が聞こえる。
だが、ニノンの足は動かない。
眼前に迫る友人、その脅威から視線を外さない。
「…………せえよ」
「……あ?」
微かに聞こえた震える声。
フィリスの顔から表情が消える。
「うるせえんだっつーの……!」
「ベラベラ喋りやがって、うぜえんだよ!!
変なコスプレしやがって、お嬢にまで妙な格好させやがって!!
何言ってるのか分かんねーよ!!さっさといつものフィリスに戻れよ!!」
圧倒的な恐怖。
だが、ニノンは屈しない。
菫への友情が、フィリスへの対抗心という名の友情が、ニノンを黙らせない。
そして、ゆなもまた。
「フ、フィ、フィリスさんっ!!
おね、おね、お姉さまを返してくださいっ!!
フィ、フィリス、さんも、一緒に、帰りましょうよぉっ!!」
一欠片の勇気が、ゆなの腹から声を絞り出していた。
零れる涙に、絶望は含まれていない。
「二人とも……」
キィン
そして、秘剣が響いた。
「……はっ、うぜえのはどっちだ。
あばよ、菫にはよろしく伝えといてやるぜ!!」
フィリスの拳が、風を纏う。
顔に触れた風圧が、絶体絶命を知らせた。
「うっ……!!!」
「ひっ…………」
「……?」
顔にあたる微かな風。
だが、今感じるそれは、死の予感などではなく、もっと温かな……
「なっ、何だ!?」
フィリスが叫ぶ。
「え、ええっ?」
「あれ、あれって……??」
ニノンとゆなが目を見張る。
赤い風が巻き起こっている。
それは、勇の手にした秘剣の輝き。
エネルギーが真紅を纏い、風に乗って辺りを覆う。
「これ……これは……
そうか、響鳴秘剣って……!!」
ばら、ばら、ばら。
勇を捕えていた触手が、力を失い崩れていく。
まるで、赤い光を恐れるように、力なく崩れていく。
「…………ニノン…………ゆな…………」
そして、菫の口から二人の名が漏れ――
「!!」
「赤いの!!何をやってやがるんだあああああああああああっ!!!!」
「フィリスさん!!貴方も菫さんも、助けてみせる!!」
「応えて、響鳴剣!!
はあああああああっ!!!」
裂帛の気合と共に。
奔流が激流となり。
光の剣が天空にそびえた。
「菫さん!!ニノンさんとゆなさんの想い……受け取って!!
たあああああああっ!!!」
「ああああああああああっ!!!」
菫の絶叫が
「す、菫えええええっ!!!」
フィリスの悲鳴を呼ぶ。
「二人の声を聞いて、菫さん!!
魔因子なんかに負けちゃ駄目!!」
光の奔流は、二人の、ニノンとゆなの、菫を呼ぶ声。
自分を求める声が、菫の身体を駆け巡る。
そして、声は呼び起こす。
「あ、あ、あ……私、私は……!!」
「菫っ!!菫ぇぇええええええええぇぇぇっ!!!」
「ぐわああぁぁっ!!!」
「わわっうわあああ!!」
「きゃああああっ!!」
閃光、爆発。
三人の視界が白に覆われる。
「あ、あ……菫、菫ぇ……」
「ちょ、ちょっと……まさか、お嬢……」
「そ、そんな!菫お姉さま…!」
嘆きと驚愕の中に
閃光を抜け
「…!お、お嬢!!」
「お姉さま!!」
微かな希望が帰還した。
「ゲホゲホッ……ふう!菫さんは取り戻したわ!」
「フィリス!次はキミの番ネ!」
「響鳴秘剣……やっぱり、吉野の技術を信じて良かったです!」
「…………」
沈黙するフィリス。
その瞳は、ただ菫のみを見つめている。
「お嬢!……あー、良かったぁ……」
「お姉さま、お姉さま!」
友の呼びかけに、菫の意識が浮上する。
「あ……貴方たち……」
「ニノンさん、ゆなさん、菫さんを助け出せたのは、貴方たちのおかげ。
菫さんを呼ぶ貴方たちの声が、想いが、この剣を起動させてくれた。」
「ユージョーパワーだネ!」
「いや、その……そうストレートな単語使われると照れるっつーか……」
「あは、いいじゃないですか!お姉さま、助かって本当に良かったです!」
「想いが……私を助けてくれた……
……ありがとう、ニノン、ゆな……」
「……えせ……」
ゆらり。
漆黒の意思が動いた。
ザッ
緊張が走る。
「フィリス……」
菫が呟く。
硬い遺志を込めて。
「かえせ……かえせ、かえせ、かえせ……!!」
「菫を返せええええぇぇぇええええぇぇぇえええっ!!!」
それは、愛する者を失った悲しみか、怒りか。
魔因子に侵された心が、雄叫びをあげ暴走する。
「いけない……完全に暴走してるみたい!
気をつけて、二人とも!」
「オシ!今度は負けないゾー!」
「サポートは任せてください!」
その時
決然と
菫が立ち上がった。
「ちょ、ちょっと、お嬢!?」
「お姉さま、危ないです!」
「エエッ?」
「す、菫さん!?」
「菫さん、危ないですから下がってください!」
「ライブエンジェルの方々……ニノン、ゆな。
フィリスは……私が助けます!」
「フィリスをああしてしまったのは、私、なのですから……」
「フィリス……聞こえて?
安心して……私はもう、何処にも行きませんわ」
「フィリス……私、言いました……ううん、言ったわよね。
貴方に、憧れてたって。
惹かれていたって。
でも……忘れて。
あんなところで、あんなときに喋った言葉なんて、忘れて。
あんなの……あんなの、私の言葉じゃないわ」
ぞわり
無言のままのフィリス。
だが、その周囲には絶望と憎悪が満ちようとしている。
「菫さん……」
キィン、キィン
静かに、響鳴が始まっていた。
「そして、私も、忘れるわ。
あの時、貴方から聞いた言葉……
あの時も、今も……貴方は、本当の貴方じゃないもの。
忘れるの……フィリス。
……良いわね。
……そして、聞いて。
私の言葉は……今から、紡ぎます」
ゆっくり、ゆっくりと、しかし一直線に、菫はフィリスへと歩み寄る。
凍りつきそうなフィリスの視線。
菫は歩く。
「フィリス……貴方は、酷い人。
私の心の平穏を、全て奪っていった。
……目障りで目障りで、本当に憎らしかったわ。
どうして貴方は、私に従ってくれないの?
どうして貴方は、いつもいつも好き勝手にやってしまうの?
どうして貴方は……そんなに、自由でいられるの。
……貴方が私の前に立つ時、私は貴方の事しか考えられなかった。
でも、貴方はきっと違った。
貴方の目は、貴方の好きな方しか向いていないんだものね。
……本当に自由で……酷い人」
「ス……ミ、レ……」
「……でもね、私が惹かれたのは、貴方のその自由。
憧れたのは、風のように吹き抜ける貴方の心。
たとえ貴方が見ていてくれなくても……
私のこの気持ちは、変わらない」
菫の腕が
フィリスに、そっと寄り添った。
「好きよ、フィリス。
私は、貴方の事が、大好き」
キィン、キィン、キィン――
言葉を失い、唾を飲み込む主達を尻目に、響鳴剣は、真っ直ぐな言葉に託された想いを受け止め続ける。
「ス、ミ、レ……」
震えるフィリスの両腕が、菫の肩を掴もうとする。
だが、何故だろうか、腕が、動かない。
「お願い、フィリス。
私の好きなフィリスに、戻って。
それが叶わないのなら……私を、殺して」
「スミレ……?」
「世界を壊すと言うのなら……私も、一緒に消し去って。
貴方が、貴方の愛した世界を壊すのを見るぐらいなら、死んだ方がマシ。
だから、お願い……私を、殺して」
「オネ……ガ、イ……スミ、レ……ヤメロ、ソンナ……コト……」
ぞわり
フィリスの身体に生えた刃が、無感情に動く。
「!!
止セ……止メろ……!!
止めて……クれ……!!!」
ぞわり、ぞわり、ぞわり
刃は、菫の肌に吸い付く。
それは、菫の「願い」を叶えようとする、歪んだ深層心理の顕現なのか。
「う、ガ、あぁ……!!
すみレ……すミれ……スみれ……!!」
逃げろ、という言葉を紡ぐ事も、もはや出来ない。
フィリスの意識は、シャボン玉の表面に浮かぶ虹色の如く――
「いいの、フィリス……
……愛しているわ」
弾けた。
「うあああああああああっ!!!
止めろおおぉぉぉ!!菫を、菫をぉ!!
傷つけるなああぁあぁあああぁぁぁっ!!!!!」
その瞬間
響鳴剣が唸りを上げた!
「その想い、受け取ったわ!!」
勇は輝く刃を構え
「響鳴剣よ!心の刃よ!!
その力を、今見せよ!!」
熱く滾った想いを乗せて
「秘剣――――」
闇を、魔を、切り裂く。
「極紅ぉっ!!!!!」
「ぐああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」
極彩色のエネルギーの奔流が、フィリスの身体を包む。
それは、菫の想い――――
「フィリス……返事、聞かせてくれるわよね……?」
「すみ……れ」
閃光
全てが終わるまで、誰も言葉を紡がない。
そして……
「……あ、ああー……」
「……う、ううー……」
エネルギーの奔流が治まった後には、裸身の少女二人が、かたく抱きしめ合っていた。
「その……さっきは……流してたっつーか……ツっこめる状況じゃなかったけどさ……」
「お、お姉さまが、お姉さまがフィリスさんとぉ~」
「ニャハハッ、コレニテ一件落着!みたいナ?」
「ふぅ……そうみたい、ね」
「……(ドキドキ)」
「菫……すまねえ……ありがと……
その……アタシ……アタシもな……」
「ううん、謝らないで、フィリス……。
それより、ハッキリ言ってくれないと……分からないわ」
「アタシも……菫のこと……な……」
「ん……」
「見つけたぞ、貴様らぁ!!!!」
亜空間の扉が開き、現れたのは――
「レ、レイン!?
なんて事!このタイミングで――」
「この私に淫獣形態まで使わせた事は褒めてやる!
だが、こうなった以上貴様らには相応の償いをしてもらうぞ!!
もはや奴隷とするつもりもない、皆殺しにして――」
「…………」
「…………」
「――何だ、その目は……?」
「き、貴様らまで何だ!その顔は!?」
「や……このタイミングで、ねぇ……」
「ナームー」
「てめぇ…………
よくも、よくも……邪魔してくれやがったな……」
瞳を絞り、顎を引き、抑えに抑えた声を響かせるフィリス。
その後ろには、胸を隠して真っ赤になる菫。
冷静に振り返るラブシーンほど救い難いものは、この世に無い。
「ひっ!……な、何だ……この気迫は……」
「ついでに……さっきの礼も……しとかねえとなぁ……!!」
「さ、さっきの礼だと?待て、私は貴様に不意打ちをうけて……」
「問答」
「無用ぉぉぉっ!!!!!」
「うぎゃあああああああぁぁぁっっ!!??」
・
・
・
「どうだった?」
「はい、吉野の方に報告したら『声か!そいつは思いつかなかった!』って、おおはしゃぎしてらっしゃいました」
「あはは、まあ、ぶっつけ本番が役に立ったみたいで良かったね」
「はい!
……そう言えば、勇さんはあの剣のこと、知ってたんですか?
使い方が分かってたみたいに見えましたよ?」
「ん……具体的には何も知らないよ。
ただ、ずっと昔におばあちゃんに聞いた事があったんだ。
"心の刃"のこと」
「心の…刃。確かに、あれはそういうモノでしたね」
「うん。ヒトの心、想いを刃にのせる剣。
てっきり、剣の道を説いた例え話のひとつだと思ってたんだけど……」
「実在した、んですね……」
「そう。……っていうかさ」
「今回は、ニノンさんにゆなさん、それに菫さんの想いだけで勝てたようなもんなんだよね……
私の想いじゃ、響鳴剣、光ってすらくれなかったし……全然力不足だったのかなあって……
ちょっとショック受けてるのよね、今」
「そ、そんな事ないですよ!
勇さんの想いが弱かったんじゃなくて、あの方たちの想いが凄く強かったんです!……多分」
「うん……ありがとね、恵。
でも、そうだよね……」
「あの人たちの絆の深さには、ちょっと憧れちゃうね。
……私たちも、あんな風にお互いを想えてるといいね」
「はい、そう思います!
……あ、でも、その……あのその、好き、とかはその……ゴニョゴニョ」
「え……あ、あははは!それは無いって!
…………うん、無いって!あははは!」
「……」
「……」
「……それはまあ、ともかく」
「ん」
「あっちは……どうしましょう」
「あっち……だよねえ」
「ン?どーかしタ?」
「はぁ……
……だりぃ」
「何をだらけてらっしゃいますの?」
「ん……」
「お嬢か……何か用?」
「用ですわ。
天文部が、今夜の観測実験に備えてそろそろ準備をしたいそうですの。
ところが、"金獅子"が居座っていて、簡単にはどいてくれそうもない。
そこで、私がライオン撤去に呼ばれた次第ですわ」
「その仇名で呼ぶのやめろっつってんだろ……
大体、言われりゃ素直にどくっつーんだよ……」
「という事なので、さっさと下校するなりしてくださいまし」
「へいへい。
毎度の小言を聞かされる前に、とっとと帰るよ」
「あら?素直なライオンはちょっと物足りないですわね……」
「あのなぁ……喧嘩売ってんのかよ、ったく……」
「ふふ……ん、そうそう……」
「髪型、変えたんですのね」
「!
ん……まあ、な」
「……可愛くなったんじゃない?フィリス」
「へ、サンキュ、……菫」
トェェイまんがまつり ライブエンジェル 対 ブライズ・オブ・レッド END