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「超獣幻装!!」
「くぅっ!!」
異様なコスチュームを身に着けたジョウのパンチが、砂を巻き上げる。
「その格好・・・淫怪人に操られてるみたいね。
ジョウ!目を覚ましなさい!!」
「・・・・・・」
「ふっふっふ、無駄だよー」
口を塞がれているから喋れないのか、そもそも喋るつもりもないのか、ジョウは勇の呼びかけには応えない。
そして、楽しげな笑い声とともに、淫怪人が姿を現した。
「エンジェルライオンはもう私の人形さ。
そうねー、さしずめドールライオンってとこかな。
そしてお次は貴方のばんってわけよ、エンジェルファルコン!」
「やれるもんならやってみなさい!
行くわよ、淫怪人!」
~中略~
「あぐうぅっ!
くっ・・・ジョウがこ、こんなに強いなんて・・・!」
「ふっふっふー、ま、それに関してはライブエンジェルの性能が思ったよりも良かったせいだね。
なんせ改造したのは外見だけで、スーツの機能はいじくってないからさ、私」
「か、改造・・・!?
ライブスーツを改造したって言うの!?」
「ふっふっふー・・・そう、私は人間が身に着けてる物を改造できるのよ。
ライブスーツも例外じゃなくね。
そして、私に改造された人間はそのまま私の意のままに動くお人形さんになる・・・」
「くっ・・・!は、放せぇっ!!」
「やーだよっ。
ふふ、それじゃあまず、そのゴーグルね・・・」
「うぐっ!・・・ぅ・・・」
キスミの指先がおぼろげに光ったかと思うと、エンジェルファルコンのバイザーが黒い革ベルトのようなものに変質した。
勇は、視界と同時に急速に意識を奪われていく。
「あはは、もう大人しくなった。
さ、ドールライオン、もうどいていいわよ。
それじゃあチャチャッと改造しちゃいますかねー」
***
しばらく後。
「・・・・・・」
「ふう・・・
さて、あとは再起動するだけ。
あっけないもんだけど、こうなるとなかなか可愛いもんねえ、エンジェルファルコン。
いえ、ドールファルコ・・・」
ドッパァァンキスミの台詞をさえぎり、巨大な水柱が海を切り裂いた。
「ン!?」
バタバタと砂浜に落下してきたのは、キスミの人形と化していた少女たち。
水柱に巻き上げられ、全員が綺麗に気絶している。
「な、なになにっ!
何事っ!?」
『見つけましたよ、淫怪人!』
「たぁっ!」
凛とした声を響かせ、水しぶきをあげながら、
エンジェルドルフィンがその名の如く海を割った。
「エンジェルッ、ドルフィン!
覚悟してもらいます、淫怪人!」
「おー、派手に出てきたじゃない!
・・・ふっふっふ、しかし一歩遅かったね、エンジェルドルフィン!」
「見ての通り、お仲間二人は既に私のお人形さんよ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そこには、ジョウと同様にスーツを改造され、人形と化した勇がいた。
ゆっくりと立ち上がり、キスミの前に控える二人。
「むっ・・・
勇さん、ジョウさん・・・!また操られてるんですね!」
「例によって例の如くよ。
それじゃあドールライオン、ドールファルコン!エンジェルドルフィンを捕らえちゃいなさい!」
キスミの号令を受け、二体の人形が恵に向かって一気に間合いを詰める。
だが、恵は動じる事なく冷静にその動きを見極めていた。
「あの動き・・・ライブスーツと同じ出力・・・いえ、ライブスーツそのものみたい。
何らかの方法で、外見だけ変えられてしまった・・・と見るべきかしら。
だとすれば・・・!」
一瞬の内に対策を見極めた恵は、再び背後の海へ飛び込む。
勇とジョウもそれに続き、ドルフィンを追い続ける。
だが。
ドルフィンと二人の距離は見る間に離れていく。
「お二人相手でも、水中なら負けません!」
浜から大きく離れた恵は、突如反転し、今度は逆に二人に向かって突進していく。
一気に距離を詰めたドルフィンは、身構える二人の周囲を猛スピードで旋廻しだした。
「・・・!?」
「行きますっ!
ドルフィンサイクロン!」
二人を包み込み、その動きを封じた海水が猛烈に渦を巻く。
水圧が限界に達した瞬間、二人の身体は一気に海面まで持ち上げられる。
ドパァン「あ、やられた・・・
えーい、めんどくさいなぁもう」
***
「なかなかやるじゃないか、エンジェルドルフィン!
今度は私が相手してあげるよ。
貴方も水中が得意みたいだけど、淫水魔に勝てるかなぁ?」
「むっ」
「行くよ・・・そうらっ!」
「っ!」
声が届くと同時に、キスミの爪が飛んでくる。
そのスピードは、ドルフィンと互角かそれ以上のものだった。
身を捻り、すんでのところで攻撃をかわす恵。
「なるほど、速い・・・!
さすがは淫水魔ですね、格闘戦では不利みたいです」
「ははっ、分かったー?
分かったなら、観念して大人しくしなさい!」
「嫌です。
格闘が不利なら」
「撃つまでです!
ドルフィンボウガン!」
「スプレー・シュート!」
至近距離から、散弾銃のように光の矢が放たれキスミを襲う。
「うわわわわわっ!!
ちょっ、いきなりそれは卑怯じゃないのっ!?」
「他人を操って戦わせる貴方に言われる筋合いはありません!」
「ぐぬぬっ・・・
おっ、あれは・・・ニヤリ!」
「おーっと、そこまでよエンジェルドルフィン!」
「あっ・・・!」
「その物騒な銃、捨てちゃってくれない?
さもないとこの二人・・・殺しちゃうわよー?」
海面に浮かんでいた勇とジョウを引き寄せ、その首に腕をまわすキスミ。
少し力を込めれば、人形状態の二人の首など簡単に折れてしまうだろう。
「さぁ、どーする?
ちょっと勿体ない気はするけど、本当に殺すわよー・・・?」
「くっ・・・」
1.動きを止めた今がチャンス
2.二人の命には代えられない
1.
「動きが止まった!
今です!フルチャージ!!」
「えっ!?
いやちょっと待ちなさい、聴こえなかったかな?
銃を捨てないと、この二人を殺すって・・・」
キスミの言葉などまるで意に介さず、攻撃態勢に入る恵。
余りにセオリーを無視した行動に、淫水魔は大いに混乱する。
「ま、待ってよ!
今私を撃ったらこの二人だって思いっきり巻き込まれるのよ!?
な、仲間を殺す気!?」
「問答無用です!」
「ドルフィンパニッシャー!!」
「あれーーーーーーっ!!??」
***
・
・
・
「勇さん・・・勇さん」
「ん・・・う?」
勇とジョウは無事だった。
ライブエンジェルに限らず、テラ・アカデミアの技術で作られたヒーローの装備にはある共通した機能が備わっている。
スーツの防御力を大きく超えたダメージを受けた場合には、スーツ自体が対消滅することで装着者の生命を守るシステムである。
外見が改造された状態でも、ライブスーツの機能はそのままであると判断した恵は、一瞬の判断で賭けに出たのだった。
「良かった・・・ご無事でしたね」
「あれ・・・恵・・・」
この後、意識を取り戻した二人が淫怪人の撃退方法を聞きだそうとしたり、
それに対して恵はただにこにこするだけだったり、
そんな恵の笑顔に二人がそこはかとなくゾッとしたりするのは、余談である。
2.BADパターン
「く・・・っ!」
(おそらくスーツの機能はそのまま・・・対消滅機構があれば、このまま撃っても・・・
でも・・・でも、万が一機能も改造されてしまっていたら・・・!)
万が一の可能性を捨てきれず、恵はボウガンを降ろしてしまう。
それは、事実上キスミへの降伏宣言だった。
「ふっふっふ・・・素直な子。
それじゃ、最後の一人って事できっちり改造してあげちゃおうかなぁ・・・!」
***
・
・
・
「さ、終わったよー。
はい、着けてあげよう」
「ありがとうございます・・・ご主人様」
キスミがライブブレスを恵の手首に巻きつける。
目の前の淫怪人をご主人様と呼ぶ恵の顔には、黒い革ベルトの束ねたようなマスクが着けられていた。
「それじゃー、三人揃ったところでお披露目と行こうか!」
「はい・・・ご主人様」
のろのろと立ち上がる三人を眺めながら、満足げに口元を歪めるキスミ。
「ふっふっふー・・・なかなかの収穫だったかもね。
さ、変身してみせてよ、ライブエンジェル・・・いやいや、違うか」
「「「超獣幻装」」」
三人の身体を、闇の波動が包み込む。
「おおー・・・いいねえ、やっぱり揃うと違うねー。
それじゃ名乗り、行ってみちゃおうか!」
「ドールドルフィン、メグミ」
「ドールファルコン、イサミ」
「ドールライオン、ジョウ」
「「「我ら、ライブドールズ」」」